慈眼寺 (下市場町)

大永6年（1526年）、福厳寺5世・養拙和尚によって創建された。ただし、記録に寺院活動が記録にみられるのは文化元年（1804年）からで、「福厳寺22世・義山和尚によって慈眼寺として正式に開かれ、この頃から過去帳の整備もなされた」とわかっている。このように、創建と開山の間に約300年もの隔たりがあり、この間の記録がまるで残っていない事から考えると、大永6年の草創というのは名目的なもので福厳寺と実質的なつながりができたのは、文化年間以後と考えられる。 また、それ以前にも寺院の痕跡があったとされる。かつて近辺には天台宗の密蔵院（熊野町）が傘下とする寺堂が多数あり、織田信長の延暦寺焼討を契機として密蔵院が衰退するとともに、寺堂はその傘下を離れて比較的新興勢力であった曹洞宗や臨済宗に鞍替えしていったと考えられている。この記録空白期間に何らかの寺院活動が存在したことは、秀吉の家臣・梶田繁政（1628年没）の位牌に慈眼寺や福厳寺の記録にもみられない「現住泰彭」という銘があることや、文化に先立つ享和年間に慈眼寺の名で切支丹改めが行われていたという記録（福厳寺への報告）があることからもうかがわれる。この過渡期には遊行僧を泊めたり、また福厳寺から派遣される留守番僧によって日常の寺院活動が行われていたと考えられる。
文化年間以後は正式に慈眼寺住職が存在し、開山の義山和尚から現在の浩道和尚まで8代をかぞえる。