楠大明神

伊勢市度会橋東詰から下流に向かって約250ｍの所に鎮座されています。

伊勢市史によると、「境楠は宮川堤上にある老楠で、周囲目通り二丈七尺余（8.18ｍ余）、地上八～九尺（2.42～2.73ｍ）の所より三枝に分れている。言い伝えでは、北(喜多)家支配の山田の中島町と、榎倉家支配の旧御薗村の一部であった中川原町（明治元年、宮川町と改め山田村に編入）の境界に位置したので「境楠」と言われるようになった」そうです。まっすぐ植えたはずだが、木の真ん中から3つに分かれ、逆さまに植えたように見えることから、「あわてて上下逆に植えた」だとか「宮川の洪水時上流から流れてきたので逆さに根付いた。」と言い合われてもきたことから、「逆楠（さかくす）」の別名も付けられたとのこと。そして、いつの間にか楠木は神様の木だと言われて注連縄が張られ、鳥居と祠が建てられるようになりました。ある時、一人の孝行娘が、母親の病気の治癒を願い、日々参拝するようになった頃から母の病気は回復し、ある日突然、この木の真ん中から白蛇が現れてから母親の病気はすっかり良くなり、娘の家は幸せに暮らすようになった。この話が伝えられる頃から「蛇楠」とも呼ばれるようになり、この木にお参りすると、何病でも治るとさえ言われるようになりました。いつしか古木となり、現在にいたるまで、付近の人々の信仰の対象となっており、「楠さん」の名で親しまれ、大事に守られてきたのが、「楠大明神」であります。街中から堤防への上り口には、石段もあり、鳥居が並びます。傍らには奉賛者名簿板もあります。実行グループの仲間の一人の話では「祠はお稲荷さん，講があって、うちのおばあさんもお参りしています」
　昭和33年に市天然記念物に指定された境楠は、残念ながら平成15年（2003）老衰枯死してしまいましたが、この楠の苗木から2世となる後継の楠が生育してきています。
　平成26年度から平成28年度にかけて国土交通省により堤防の改修工事が行われ、それに伴い境楠周辺は小広場やスロープ整備により保全が図られました。現状は枯死した境楠のそばに寄り添うようにムクノキとサカキが伸びています。これらの木と二世の楠の木の元に「クスノキ大明神」の小祠があり、令和元年に史跡の指定を受けました。